腎機能の検査値の見方 クレアチニン Cr 筋肉で分解されたアミノ酸の老廃物で、腎臓でろ過された後、尿細管で再吸収されることなく、尿へ排出される。 腎機能が低下した場合には、クレアチニンの排出が障害され、血液中に溜まっていき数値が上昇する。 腎機能障害以外にも、腎血流が減少する心不全や脱水のときには、腎臓は血圧を上げようと、糸球体でのろ過量を減らしたり、再吸収を亢進するよう働くので、クレアチニンは排泄されずに血中濃度は上がっていく。 また、クレアチニンは筋肉で分解して出来る老廃物なので、筋肉量が多ければ、その分クレアチニンもたくさん産出されるので高くなり、逆に筋肉量が少なければ低くなる。 基準値 男性:0. 61~1. 47~0. BUNもクレアチニンと同じように、糸球体でろ過されて尿中に排泄されるのだが、腎機能が低下した場合には、これまた同じように血液中に溜まっていき数値が上昇する。 BUNも腎血流が低下する場合に上昇するが、それ以外に消化管出血でも上昇する。 血液の多くはタンパク質でできているので、口から食物 タンパク質 を摂取したときと同じように、腸管内にある血液 タンパク質 は、腸管から吸収される。 腸管で吸収されたタンパク質は代謝されてアンモニアとなるため、結果的にアンモニアの老廃物であるBUNも上昇することになる。 何故、そんなことをするのかと言うと、Crの項目で前述した通り、Crは筋肉量で値が左右するため、高齢者と成人男性ではもちろん値が変わってしまう。 そのため、筋肉量での差をなくして腎機能を正確に評価するために用いられる。
次の検査名称 尿素窒素 BUN、UN 、クレアチニン CRE 、尿酸 UA 、クレアチニン・クリアランス CCR 基準値 尿素窒素 BUN、UN 8. 0~20. 65~1. 46~0. 6~7. 7~7. 腎臓は血液中の老廃物や不要物をろ過して、余分な水分とともに尿として体外に排出する器官です。 尿素窒素 にょうそちっそ 、クレアチニン、尿酸は、体内でエネルギーとして使われたたんぱくの残りカス 老廃物 です。 血液中に含まれるこれらの値を測定し、腎機能が正常にはたらいているかみていきます。 検査で何がわかる? 尿素窒素 BUN、UN 尿素窒素は、いわゆる「たんぱくの燃えカス」で、腎臓からろ過されて尿中に排出されます。 急性や慢性の腎不全 じんふぜん に陥り腎機能のはたらきが衰えると、ろ過しきれない分が血液中に残り、尿素窒素の値が上昇します。 また脱水やむくみ、尿路結石 にょうろけっせき や尿路の腫瘍 しゅよう などの閉塞性尿路疾患があると、たまった尿中の尿素窒素が血液に逆流して高値になります。 また、たんぱく質のとりすぎ、感染症、がん、糖尿病、甲状腺機能亢進症 こうじょうせんきのうこうしんしょう 、消化管 しょうかかん 出血などで、尿素窒素がつくられすぎる場合も、血液中の尿素窒素が上昇します。 一方、尿素窒素は肝臓で合成されるので、肝硬変 かんこうへん や劇症肝炎 げきしょうかんえん など肝不全の状態になるとつくられる尿素窒素が減って低値になります。 たんぱく質の摂取不足も尿素窒素の量が低下します。 尿素窒素は、食事やむくみなどの生理的変動の影響を受けるので、クレアチニンや尿検査などの検査結果とあわせて判断します。 クレアチニン CRE クレアチニンは、筋肉中の物質からできる老廃物で、腎臓でろ過されたあと尿中に排出されます。 このクレアチニンの量は、筋肉や運動量と関係しているといわれます。 そのため、一般に女性より男性のほうが高値に出ます。 筋肉量が落ちてくると、クレアチニンの量も減少します。 また、妊娠すると、尿から排泄するクレアチニンの量が多くなるために、値が低くなります。 血液中のクレアチニンの濃度は、腎機能をみる指標となります。 腎機能に障害があると、排泄量が低下して、血液中のクレアチニンの値が上昇します。 基準値を上回って高値になるときは、急性腎炎、慢性腎炎、腎不全のほか、尿路結石 にょうろけっせき などの尿路閉塞疾患 にょうろへいそくしっかん 、心不全などの病気が疑われます。 ショックや脱水などでも血液中のクレアチニンが高値になります。 反対にクレアチニンが低値の場合は、尿崩症、筋ジストロフィーなどの病気が疑われます。 eGFR値 推算糸球体濾過量 eGFR値とは、腎臓の中にある糸球体がどれくらい老廃物をろ過することができるかを示す値で、腎臓の機能を把握できます。 腎障害や腎機能の低下が慢性的に続く状態を「慢性腎臓病 CKD 」といいますが、慢性腎臓病は透析を要する腎不全の予備軍であるだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の非常に強い危険因子であることがわかってきました。 このeGFR値を用いることで、自覚症状に乏しい慢性腎臓病の早期発見が可能と考えられています。 下記のサイトにアクセスするとeGFR値が簡単に計算できます。 jinzou. 尿酸といえば痛風 つうふう の原因物質として知られていますが、尿管結石や腎障害の原因になることがあります。 また、尿酸値が高いということは、動脈硬化 どうみゃくこうか が進みやすい状態であることを示しています。 尿酸値は、一般に女性よりも男性のほうが高値になりますが、女性も更年期をすぎて女性ホルモンが低下すると、男性の値に近くなります。 診断基準では男女とも7. 高尿酸血症が起こる病気の代表は、痛風です。 また、腎不全、白血病、悪性リンパ腫などの病気でも、値が高くなります。 脱水や高カロリー食、飲酒などでも尿酸値が上昇します。 一方低値を示す病気には、重症の肝障害などがあります。 クレアチニン・クリアランス CCR クレアチニン・クリアランスの検査値が高値になる場合に考えられることは、初期の糖尿病、先端巨大症、妊娠などがあげられます。 しかし、この検査で問題になるのは、検査値が低値の場合です。 検査値が低い、つまり、ろ過された血液量が少なければ、腎臓の老廃物を取りのぞく能力が低下していることを意味します。 このことから疑われる病気は、糸球体腎炎 しきゅうたいじんえん 、腎硬化症 じんこうかしょう 、糖尿病性腎症 とうにょうびょうせいじんしょう 、膠原病 こうげんびょう による腎障害、尿路閉塞 にょうろへいそく による腎障害などです。 いずれも腎臓専門医の適切な治療を受けて、病気を悪化させないことが大切です。 ヘルスケア辞典•
次の血液検査でわかること 血液検査では、次のようなことがわかります。 肝機能• 心機能• 腎機能• 膵機能• 血糖の状態• 脂質の状態• 電解質の状態• 炎症の状態• 血液細胞(白血球、赤血球、血小板)の状態 それぞれの内容について以下で見ていきましょう。 血液検査の各項目の意味 肝機能の検査(肝臓と関係する項目) 肝臓は、様々な物質の代謝をしたり、体に必要なものを合成する重要な臓器です。 肝機能の障害は、肝臓で合成されるものが減ったり、肝臓の細胞が壊れて細胞中の酵素が血液中に増えることで診断します。 アルブミン 肝臓で合成され、血清総蛋白の約60%を占めています。 肝機能障害の他、全身の栄養状態を反映します。 AST・ALT アミノ酸を作るのに必要な酵素です。 この2つの酵素は肝臓にたくさん存在するため、肝臓の細胞がダメージを受けて壊れると血液中に漏れ、値が高くなります。 長期にわたり飲酒していると上昇しますが、禁酒によって低下します。 ALP 肝、骨、胎盤、小腸に由来する酵素です。 肝胆道疾患、骨の病態をチェックします。 LDH あらゆる組織に広く分布し、心疾患、肝疾患、悪性腫瘍、白血病などで上昇します。 疾患の特異性は、あまりありません。 総ビリルビン 胆汁色素の主成分で、肝胆道疾患の診断に用いられます。 ビリルビンが作られてから排泄されるまでの過程のどこかに障害があると、血液中のビリルビンが増加し、黄疸の症状がでます。 心機能の検査(心臓と関係する項目) 心臓は、全身に血液を送るポンプの働きをしています。 通常安静時で1分間に60~80回程度、規則正しく収縮しています。 心筋が障害されると心筋細胞に含まれる酵素が血中に増加します。 CK 骨格筋、心筋、脳、平滑筋など広く分布する酵素で、高値の場合はこれらの臓器の障害を反映します。 CKーMB 心筋由来のCKを表します。 心筋梗塞の早期診断に有用です。 腎機能の検査(腎臓と関係する項目) 腎臓は、血液中の老廃物を濾過して尿中に排出しています。 腎機能が低下すると、そういった老廃物が血液中に増加します。 尿素窒素(UN) たんぱく質の最終分解産物です。 血液中のUNは腎臓で排泄されるため、腎機能が低下すると血液中の値は増加します。 クレアチニン(Cr) 筋肉の老廃物で腎臓から排泄されるため、腎臓の機能が低下すると血液中の値は増加します。 尿酸(UA) プリン体の最終代謝産物です。 腎機能障害の他に痛風、関節炎などの診断に用いられます。 膵機能の検査(膵臓と関係する項目) 膵臓からは膵液という強力な消化液が分泌されますが、その中にAMY(アミラーゼ)という糖質を分解する酵素が含まれています。 食べ過ぎ、飲み過ぎで膵液が大量に分泌されると、やはり膵液に含まれる蛋白分解酵素によって膵臓自体が消化され、膵炎を起こします。 AMY 膵臓と唾液腺に多い酵素です。 膵炎や耳下腺炎などのスクリーニングと経過観察に使います。 AMY-P型 膵臓由来のアミラーゼです。 膵炎などの診断に使います。 血糖の検査(糖尿病と関係する項目) 糖尿病は、膵臓からのインスリン分泌の問題で空腹時血糖が上昇し、慢性的に血糖が高い状態となり、全身の血管内皮が障害され、血行が悪くなることで様々な臓器の障害を引き起こします。 血糖(Glu) 血液中のブドウ糖量です。 一般に空腹時は低く、食後に上昇します。 その他、運動、喫煙、ストレスなどによっても大きく変動します。 医師に、何時ごろ食事をしたかをお知らせください。 グリコヘモグロビン(HbA1c) 赤血球の中にあるヘモグロビンの一部とブドウ糖が結合して、グリコヘモグロビンになります。 一度作られると、その赤血球の寿命が尽きるまでの間、血液中に残っています。 このため、血液中のグリコヘモグロビンの割合を調べることで、過去1~2ヶ月の血糖の状態を知ることができます。 脂質の検査(高脂血症と関係する項目) コレステロール 体の細胞膜やホルモンを合成するのに、必要な成分です。 食べ物から取り入れたり、肝臓や小腸でつくられます。 HDL型とLDL型があります。 血液中のコレステロールの量が増加すると動脈硬化が起こり、様々な病気の原因となります。 血液中の余分なコレステロールを肝臓に運ぶのがHDLーコレステロールで「善玉コレステロール」と呼ばれ、細胞にコレステロールを運ぶのがLDLーコレステロールで「悪玉コレステロール」と呼ばれます。 中性脂肪 活動のエネルギー源です。 使われず余った分は、皮下脂肪として蓄えられます。 食後に血液中の値が上昇するため、食前に採血します。 電解質の検査 細胞の浸透圧や筋肉、神経の働きを調節したりします。 Na, Cl 水分、浸透圧の調節などに関与します。 NaとClはほぼ並行して変動します。 K 浸透圧および酸塩基平衡に関与します。 多くは細胞内に含まれ、腎不全などで高値になります。 炎症の検査 肺炎、膀胱炎などの炎症性疾患の診断に役立ちます。 CRP 体内で炎症反応や組織の破壊が起きている時に血中に現れるタンパク質です。 炎症性疾患で鋭敏に上昇し、病態の改善後速やかに低下するため、病態の診断、予後の判定、治療効果の観察に役立ちます。 血液細胞(白血球、赤血球、血小板)の検査 血液細胞の数を数え、その形態を観察する検査のことを血球計数検査(血算)といいます。 血液細胞は、主に赤血球系、白血球系、血小板系の3種類に分けられます。 白血球 風邪を引いたり細菌に感染すると白血球は数を増やし、外敵から身を守ろうとします。 その逆に、白血球が減ると免疫力が減少して感染しやすくなります。 赤血球 数が増えすぎると細い血管を詰まらせる原因になり、少なすぎると酸素が運ぶ量が減り、ふらついたり、息苦しくなります。 血小板 止血の働きがあるため、増えすぎると固まりやすくなり、細い血管を詰まらせる原因となります。 また、減りすぎると出血が止まりにくくなります。 基準値とは 基準値というのは95%の健常人がその中に入る値で、逆に言うと、5%の人は健常人であってもそこに入りません。 以前は「正常値」という言葉を使いましたが、男女や年齢によっても基準範囲は異なるため、基準値の範囲からはずれたらすぐに異常だという誤解を生まないために「基準値」という言葉を使うようになりました。 検査結果は、食事や運動、採血した時間によっても影響が出ます。 基準値とは、あくまでも目安の値と考えていただいてもよいかもしれません。 また、施設によっても基準範囲は異なります。 これは、検査方法が異なるためですが、患者さんにとっては不便なことだと思います。 検査方法をそろえて基準値をそろえていこうという動きは、国内でも国際的にも少しずつ見られるようになってきました。 執筆者紹介 出江 洋介(いずみ ようすけ) がん・感染症センター都立駒込病院 部長・患者サポートセンター長 専門分野:消化器外科・食道外科・内視鏡外科 資格:医学博士、日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、日本消化器病学会専門医、食道科認定医、食道外科専門医、癌治療認定医、日本消化器内視鏡学会専門医、東京医科歯科大学 臨床教授•
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