鬼 滅 の 刃 炭 治郎 壁紙。 LiSA、劇場版『鬼滅の刃』も主題歌担当 “炭治郎役”花江夏樹も感激

『鬼滅の刃』炭治郎、義勇、しのぶ…6柄の靴下発売へ キャラを刺繍で表現

鬼 滅 の 刃 炭 治郎 壁紙

【注意書き】 ・この小説では原作の改変があります。 ・キャラによっては口調が違うと感じるかもしれません、ご容赦ください ・作者の趣味全開の話です ・原作との設定に矛盾があるかもしれません それでも大丈夫という方は、どうぞ本編をお楽しみいただければ幸いです。 季節は秋の深まるころ。 雲取山は見事な紅葉で木々が艶やかに色づいていた。 もうすぐ訪れる冬に備えて竈門家は日々慌ただしく過ごしていた。 家長である炭十郎の早世により一時暗い影が落ちていた竈門家であったが、刻々と過ぎる季節の前ではそんな影もどこかに吹き飛んだ。 父の死は確かに悲しいが、今の家族を養うためにも食べ物を得なければならない。 「俺は長男なんだから、これからは俺がもっとしっかりしないと」 そんな風に自分を鼓舞し、竈門家長男の炭治郎は家族のために働くのだった。 竈門家は代々炭売りを家業としていた。 山でとれた木々を焼き、炭として山の麓の村々にそれらを売り賃金を得ていた。 父である炭十郎は床に臥せていることが多かったため、炭焼きはもっぱら炭治郎や兄弟の仕事であった。 そのため幸か不幸か、父が病死しても家業には大きく支障が出なかった。 その日も炭治郎は前日に焼いた炭を麓から少し離れた村に売りに出ていた。 父から形見として受け取った花札のような耳飾りを付け、炭治郎は村の中を売り歩く。 あまり売りに来たことがない村だったせいか、思ったよりも炭が捌けず最後のひとつを売り切るころにはとっぷりと日が暮れていた。 家々は明かりを灯し、村内は比較的明るかったが村の外は明かりなど有るはずもない。 星の明るさを頼りに家路につくか、今日の売り上げを一部使って宿を取るかの選択となった。 しかし炭治郎はここで自分がお金を使うことへの罪悪感から、近くにあった店じまいを始めた商店に頼み提灯を一つ売ってもらった。 商人に礼を言い、炭治郎は村の出入り口まで歩いた。 そこで提灯の火袋(周りの紙の部分)を外し懐から火打石を取り出で、カンカンと数度打ち付け中の蝋燭に火を灯す。 ぼうっと小さな明かりが炭治郎の周りを照らす。 火袋に火がつかないようにそっと蝋燭にかぶせ、提灯を片手に急いで家路につこうと歩こうとした時だった。 「もし、そこの少年」 背後から若い男の声がした。 炭治郎は声の方に振り向いた。 そこには洋装に身を包んだ男が一人、立っていた。 一応炭治郎は自分の周りを見回し、この周囲には自分しかいないことを確認する。 どうやらこのハイカラな格好をした男は自分に声をかけてきたので間違いないようだ。 「はい! 俺に何か御用でしょうか?」 第一発声は元気よく。 炭治郎のもっとうであった。 自分に声を掛けてきたのだから、自分になにか用があるはず。 そんな人を嫌な気分にさせないためにも、大きな声で元気よく炭治郎は返答した。 しかし、男は怪訝な表情をいたままだった。 炭治郎のことを舐めまわすように上から下からと無作法にじろじろと見て、眉間のしわを深くさせる。 そのまま男が何も言わないので炭治郎は困ってしまい、えっと……と言葉を詰まらせる。 しばらく男はそのまま炭治郎を見ていたが、やがて足を動かして一歩一歩炭治郎の方に歩いてきた。 炭治郎は少し気味の悪さを感じてはいたが、近づいてくる男の様子をうかがっていた。 男は炭治郎の真正面に立つと、右手ですっと彼の耳飾りに触れる。 炭治郎は一瞬耳飾りを取られるのではとどきりとしたが、男は指先で耳飾りを遊ばせるばかりでしばらくそのままにされていた。 やがて男が口を開く。 「少年、この耳飾りはどうしたんだい?」 口調こそ優しげだが、炭治郎はこの男から強い怒りのようなものを感じた。 男は香水をつけているのかうまく鼻が利かず、何を考えているのかは分からない。 自分と初対面のはずのこの男は何をそんなに怒っているのだろうと炭治郎は思ったが、まだ幼い彼にはその場をうまくごまかすといったことは出来ず、ただ男の質問に素直に答えた。 「この耳飾りは父からの遺品です。 俺たち家族の大切な耳飾りです」 男の目を見てまっすぐに答える。 男はほう、と言ったっきりまた黙ってしまった。 しばらくして男はふっと薄く笑って、炭治郎に向けて手を差し出す。 「これは失礼した少年。 私は月彦という。 ここから少し先にある街で貿易の仕事をしているものだ。 こんな時間に子供が一人で歩いていたもので気になって声をかけてしまったんだ」 「そうなんですね。 俺は竈門炭治郎です。 この先の山で家族と一緒に住んでします。 炭売りをしていたらこんな時間になってしまって、これから家に帰るところなんです」 炭治郎はそう言って男の手を握った。 冷たい手だなと思いつつ、二人は握手を交わす。 「そうか、炭治郎というのか。 では炭治郎、良ければ私が君を家まで送っていいかな? 夜の森は危ないというし、子供一人でこの時間から山に入るのはとても危ないだろう?」 「あ、いえ。 俺は山育ちなんで暗くても大丈夫です。 月彦さんこそきっとお仕事でこちらに来ているんでしょう? 俺が邪魔しては悪いです」 そう言って炭治郎は月彦の申し出を断ろうとする。 しかし、握られた手をさらにつよく握られる。 有無を言わせない月彦のその態度に炭治郎は根負けし、お願いしますと小さくつぶやいた。 月彦と一緒に山に入ったはいいが、炭治郎は男の心配をしていた。 あの装いではきっと歩き辛いだろうとか、服が汚れてしまうとかそんなことを考えていたが、意外にも月彦の足取りは軽かった。 すいすいと山の険しさなどものともせずに炭治郎の横にぴったりと付いて、道とは呼びにくい山肌を歩いていく。 炭治郎は月彦さんは意外にも山慣れしているのだなと思いながら、気づいたら家のすぐそばまで歩いてきていた。 「月彦さん、あそこに見えるのが俺の家です。 もう遅いですし、送っていただいたお礼もしたいので良ければ泊っていきませんか?」 半ば強制だったとはいえ、見ず知らずの自分をこんな山中の家まで送ってくれたのだ。 きちんと礼をするのが筋だろうと考えて、炭治郎は月彦に提案した。 しかし、月彦は炭治郎を送り届けたらすぐに失礼するといって彼のもてなしの誘いを断った。 炭治郎は残念そうに「そうですか」とつぶやいた。 家につくとすぐに母の葵枝が戸から慌ただしく出てきた。 もう宵の口であったが、どうやら母寝ずに炭治郎の身を案じてくれていたらしい。 「炭治郎! もう、凄く心配したのだから! 一体どうしてこんなに遅く……」 そこまで言って葵枝の目が炭治郎の横に立つ男に気づく。 月彦は葵枝のそんな様子を見て、口を開く。 「これは炭治郎のお母さま。 私は月彦と申します。 近くの町で貿易を生業としているものです。 たまたま立ち寄った村で炭治郎君を見かけて、日も暮れたのに山に帰るというもので心配と思いこうして送りに来たしだいです」 月彦にそう言われ、葵枝は慌てて立ち居を正す。 「まあ、そんな親切にありがとうございます。 こんな山奥まで送っていただいて。 あなた様に合うようなご用意ができるか分かりませんが、朝までどうぞゆっくりしていってくださいな」 葵枝は笑顔でささ、どうぞと月彦を中に通そうとする。 「ごめん、母さん。 月彦さんはもう行かなくちゃならないらしくて……」 と、炭治郎が申し訳なさそうに母に告げる。 「まあ、そうなんですか……。 残念です 何かお礼がしたかったのですが。 そうしましたら、もし近くに立ち寄ることがありましたら是非お礼をさせてくださいませ」 葵枝はにっこりと笑顔で月彦に言う。 月彦はそれは是非と薄く笑い、竈門家を後にした。 ——月彦が去った後で、炭治郎が葵枝から盛大に雷を落とされたのは言うまでもない。 それからしばらくして月彦は、本当に竈門家に立ち寄ってきた。 まさか本当に来てくれるとは考えておらず、竈門家一同はもてなしの準備に大慌てとなった。 それからはかなり頻繁に、月彦は竈門家に訪れるようになった。 最初のころこそ、こんな山の中に短期間に何度も訪れる月彦に疑問を感じたていた。 しかしどうやら月彦は最近妻子を亡くしたらしく、懐かしさもあってよく来るのだとそう聞いた。 聞いた後からは自分たちの身の上と重なり、どことなく月彦に親近感を抱くようになっていた。 仕事の都合があり、月彦が竈門家を訪れるのは日が暮れてからだったが不思議なことに彼の服にはいつも泥跳ねやほつれなどがなく、まるで山道を歩いてきた風体とは言えなかった。 なにか秘密があるのかと六太が聞いたことがあるが、「秘密だ」と言って頭を撫でられたと六太はニコニコしながら炭治郎に言ってきた。 下の兄弟たちは月彦が来るたびに外国のめずらしいお菓子などをもらえるととても喜んでおり、炭治郎もそうした兄弟たちを見てまるで父が返ってきたような錯覚を抱いていた。 月彦はもちろん炭治郎にも優しく接してきた。 特に耳飾りがお気に入りのようだった。 縁側に座った月彦が「炭次郎」と呼べば、炭治郎は彼の隣に座り月彦は耳飾りをしゃらしゃらと触った。 それがなんともこそばゆいのだが、同時にとても心地よくこんな風に家族みたいに過ごせる時間が長く続けばよいのにとそんな風に考えることが増えていった。 そんな日々が過ぎ、季節は本格的に冬となった。 多くの動物たちが消え、雪が積もった山の中では炭治郎は山から下りる回数を減らしていた。 もちろん食料を買いに降りることもあったが、秋ごろと比べればその回数は格段に減っていた。 雪の中でも月彦は竈門家を訪ねてきた。 不思議なことに雪が降る日は昼間から突然現れた。 なんでも雪の日には仕事が休みらしく、今日は一日一緒に居られると下の兄弟たちは大いにはしゃいでいた。 そしてまた雪の降る日に月彦は竈門家にやって来た。 何して遊ぼうか、雪投げでもしようか、それとも雪滑りでもしようかときゃっきゃと騒ぐ幼子を横目に、月彦は炭治郎に近づく。 「こんにちは炭治郎。 相変わらずここの雪は深い」 「こんにちは月彦さん。 今日は一日居られるとのことで、俺もみんなもとても嬉しいです」 にっこりと満面の笑みで月彦に言う。 厚い雲に覆われ日の光が差さない天候であったが、炭治郎の笑顔はぱあっと周りを明るくさせる。 そんな炭治郎につられてか、月彦も穏やかに笑う。 「嗚呼、おまえの笑顔はまるで太陽のようだな炭治郎」 「え、そうですか? 月彦さんにそんな風に言われるとこそばゆいですね……」 えへへ、と頬を掻きながら炭治郎は頬を緩める。 そこにすっと月彦の手が炭治郎の方頬を覆う。 ひんやりとした手が頬にあたりどこか心地よさを感じるとともに、触れられた部分が少し熱を帯びたように感じる。 「……月彦さん?」 「ん、すまない炭治郎。 ……私の子供も生きていればこんな風に笑っていたのかと思うとつい、ね」 そう言って月彦は手を放す。 名残惜しさを感じつつ、月彦さんも寂しいのかなと無意識に匂いをたどろうとしたのだが、やはり香水の匂いが強く彼の心情は推し量れなかった。 「なあ炭治郎。 君よければ私の家に来ないか? 私は君をとても気に入っている。 君さえよければいつまでも居てくれて構わない」 急な月彦の申し出に炭治郎は驚いた。 「えっと、それは給仕や下男としてあなたの家で働くということでしょうか……?」 「いいや、違うぞ炭治郎。 私はそういう関係を君に望んでいるのではない もっと家族に近い間柄として、君を家に向かいたいと言っている」 月彦の装いからして彼は相当な資産家であると考えてはいた。 でなければこんな風に縁もゆかりもない、ただの炭焼き小屋の自分を自分の家にまして家族のように迎えたいなどと言うはずがない。 「俺を養子に迎えたいってことですか?」 「君が望むなら妻だっていいんだがな」 「つ、妻って! お、俺は、男ですよ!?」 月彦の発言に炭治郎は声がひっくり返った。 大きな声を出した兄に驚いたのか兄弟たちが、どうしたのと駆け寄ってくる。 そんな兄弟に大丈夫だよ、もう少ししたらみんなで遊ぼうねとやさしく言い渋る兄弟たちを向こうにやった。 「そこまで驚くことか?」 「いや、驚くでしょう! 急に妻になれって!」 「私には性別は関係ないのでな」 「えっ? それってどういう……」 「ともかく返事を聞こうか炭治郎。 もちろん私が満足する答えだと信じているぞ」 炭治郎の疑問には耳を貸さず、月彦は返答を急いた。 ほんの少し考えてから、炭治郎はうつむいて言う。 「あの、そうやって俺のこと気にかけてくれるのはとても嬉しいです。 でも俺はここを離れるわけにはいきません。 俺は長男なんで、竈門家を継いでいかなければなりません 父との約束もあります。 なので、あなたの申し出を受けることは出来ません。 ……ごめんなさい、月彦さん」 言い終えた後、少し間を開けてから恐る恐る月彦の顔をのぞく。 「——っ!」 一瞬、悪鬼が立っていると思ってしまった。 恐怖に身体が強張り、奥歯がカチカチと音を立てる。 強い香水の匂いをさらにかき消すほどの憤怒。 しかし、それは次の瞬間にはきれいさっぱり消え去り残念そうだが穏やかな顔の月彦が立っているだけだった。 「そうか……とても残念だよ炭治郎。 しかし、もし———」 そのあとの言葉は小さすぎて聞き取れなかった。 聞き返そうとしたが六太たちが月彦と遊びたいと彼に群がっていった。 「つきひこさん! あそぼー!」 無邪気に笑う下と兄弟たちと一緒に月彦は家から少し遠ざかっていく。 「あまり遠くには行かないでくださいねー」と月彦と子供たちに向かって葵枝が言う。 そんな彼の背中を炭治郎も慌てて追った。 あの雪の日、月彦が炭治郎に家族になろうといった日以来ぱったりと月彦は竈門家に来なくなった。 雪のせいで家の周り以外に行き場のない小さな兄弟は、生活に刺激がなくなったのか寂しがる様子を多くみるようになった。 家族の中で唯一心当たりのある炭治郎であったが、事情が事情なだけに誰にも言うことが出来ずに今日まで過ごしていた。 禰豆子にだけは言ってもいいかなと考えているが、どうしようと悩んでいるうちに時間だけが過ぎていった。 時間が過ぎれば大家族の竈門家の食料は、分かりやすいように目減りしていった。 冬の期間はこれで足りるだろが、正月には家族に腹いっぱい食べてもらいたい。 そんな思いから、納屋から炭を引っ張り出し籠に入るだけ入れ町に向かおうと準備をした。 ちょうどそこを葵枝に見つかってしまい、無理をしなくてよいという母親の言葉に対して大丈夫と返し、炭治郎は炭を売るため町に向かった。 その日の夕方。 十分な売り上げを稼ぎ、帰路についていた炭治郎。 途中で三郎爺さんに「鬼が出るから泊っていけ」と強く言われたが、断った。 はやく家につきたかったし、それにもしかしたら月彦さんが訪ねてきているかもしれない。 ざくざくと雪を踏み進み家まであとわずかと迫った時、炭治郎の鼻は鉄臭さを嗅ぎ取った。 ——血の匂いだ! そう思ったときには駆け出していた。 雪が深いせいで足取りは遅かったが、それでも懸命に走った。 冷たい空気が肺いっぱいに入り込み、息をするのがつらかったがそれでも走り続けた。 そして走り続けた先で炭治郎が見たのは、紅に染まった家族だった。 「あ……あ、あ、あああああああああああああああ!!」 叫びながら家族のもとへ走り寄る。 母ちゃん、花子、竹雄、茂、禰豆子、六太。 家族の名前を呼びながら一人ひとり確かめていくが、誰も息をしていない。 何度も何度も確認して、そこには誰も生きている人がいないと、そんな現実にただひたすら打ちのめされた。 「なんで……!! 誰が!! どぉして……!!」 俺の、家族が……!!! うずくまって嗚咽する炭治郎に、サクサクと雪を歩いて誰かが近づいてくる。 その人物は炭治郎の前で歩みを止めて「炭治郎」ととどまでも優しい声色で彼に声を掛けた。 炭治郎ははっと涙と鼻水でくちゃくちゃになった顔を上げ、そこに月彦が立っていることに気づいた。 「な……んで、月彦さん? こんな、ところ、に……?」 薄く微笑みながら、月彦は目線をうずくまる炭治郎と同じ高さに合わせる。 ポケットからハンケチを取り出し、炭治郎の顔を拭く。 ふわりと、甘い香りを炭治郎の鼻が捉える。 どうやら月彦さんの布から匂ってくるようだ。 甘い匂いにあてられてか、炭治郎はだんだんとぼうっとしていき思考力が奪われていく。 「嗚呼、可哀そうに炭治郎。 家族が殺されてしまって…… でも、大丈夫だ。 お前には私がいる。 私と一緒に来ると良い。 そうすれば私たちは新しい家族になれる。 素晴らしいことだ」 一方的に月彦が言う。 しかし炭治郎はその言葉を十分に聞けてはいなかった。 悲しみに暮れ思考能力が低下している彼には月彦の言っていることは、あまりにも難解だった。 そんな炭治郎を知ってか知らずが、月彦は彼をひょいと持ち上る。 炭治郎は特に抵抗もせずに月彦の胸の中に納まっている。 そんな炭次郎の様子にますます気分を良くしたのか月彦はふっと笑い、そのまま山を下りていった。 気づけば炭治郎は立派な作りの部屋にいた。 窓のない部屋だったが、炭治郎が見たことのないような繊細な細工のなされた良質な家具がいくつも置かれている。 薄手の布が吊り下げられている西洋の寝具の上に、炭治郎は寝転がっていた。 上半身を起こしてまだぼうっとする頭を懸命に動かし、自分がどうなったのかを考える。 家族が、殺されて、そこに、月彦さんがいて、それから……どうなったんだっけ? きいと音がして、部屋にある唯一の扉が開いた。 炭治郎がゆっくりと音の方を向くと自分と一緒に山から下りた人物が立っている。 「……つきひこさん」 炭治郎が小さな声で言う。 うまくろれつが回らず、すこし舌っ足らずになってしまった。 月彦はつかつかとベッドに近づいてきて、どさっと腰を下ろす。 微睡む双眸の炭治郎の顎を片手でくっと持ち上げ、その瞳を吸い込むように見る。 「薬の効果がまだ残っているか。 まあ、いい。 どの道ここに連れてこられたら逃げられはしないのだから」 薬……? あの甘い匂いこと……? 「嗚呼、お前があの時私のもとに来ると言っていれば家族は死なずに死んだのだがな。 しかしお前の絶望に染まった顔が見れたのも一興か。 あの憎い耳飾りの継承者。 見つけた時は八つ裂きにしようかとも考えたが、結果的にこうして私の気分がわずかでも晴れているのだからまあ良しとするか」 なんだ? 彼は何を言っているんだ? 家族が、なんだって? 「それにしても美しい瞳だ。 まるで太陽のよう。 私が求めてやまないただ一つのもの。 私がお前を殺さない理由は、お前には太陽を感じたからだ。 だから殺さずに鬼にして永遠にそばにおいてやる。 さあ、鬼の祝言を挙げようではないか」 私だけの太陽。 そうそっと炭治郎の耳元で月彦——無惨は呟いた。 炭治郎は屋敷の大広間に座っていた。 彼の配下だと名乗る鬼に無理やり白無垢を着せられ、紅を差し、見目を整えられて美しい人形のような姿になっていた。 身体はまだうまく動かせず、ようやく喋れる程度の炭治郎にもはや現状をどうにかする力はなかった。 炭治郎以外にはだれもいない、一人では広すぎる部屋。 時間だけが過ぎていき、どうにかこのまま薬が切れて動けるようになればと考えていた。 しかし背後の大扉が開きこつこつと部屋によく響く足音が、炭治郎を否が応でも現実に引き戻す。 美しい装いで現れた無惨は炭治郎同様に祝言にふさわしい出で立ちだった。 その手には細かな模様の描かれた美しい金の杯を持っている。 彼は炭治郎の前に座り、持っていた杯を自分の横に置く。 一体どうするつもりなのだろうと炭治郎が考えていると、彼は炭治郎の両肩に手を置き、乱暴に白無垢を乱す。 肩があらわになり、あっけにとられる炭治郎をよそにその肩に牙を食い込ませた。 「うぐっ!」 いままで感じたことのない、肩が焼けるような痛みに炭治郎はたじろいだ。 一方の無惨はそのまま炭治郎の肩傷から血液を啜っている。 喰われる、と炭治郎の身体が恐怖から縮こまった。 筋肉が収縮したことにより血液の出が悪くなったのか、無惨は不機嫌そうな顔で炭治郎の肩傷から顔を話す。 唇にわずかに残る血液を舐めとり、浅く呼吸を繰り返す炭治郎を見据える。 無惨が両手で肩を押さえているため、まだ座位を保ってはいるがその眼は恐怖に染まっていた。 「いい表情だ、とても良いな」 無惨はそう言って両手を離す。 支えを失った炭治郎の身体はどさりと横に倒れる。 肩口からは血が滲み、白無垢を赤く汚す。 うめく炭治郎をよそに無惨は己の腕を爪で切り裂き、せっかくの晴れ着が汚れていくことを気にもせず流れ出る血液を金の杯に注いでいく。 横に倒れる炭治郎を片手で起き上がらせ、杯を口もとに持っていく。 「さあ、飲むんだ炭治郎。 私の血を飲めばお前は鬼になれる。 そうすれば私と永遠に一緒にいられる。 お前という太陽がずっと私だけのものになる」 痛みに視界がかすむ炭治郎であったが、目の前の杯に口を付けてはいけないことは理解できた。 鬼が本当にいるなどとは思ってはいないが、目の前の人物が狂人であることは分かった。 近づく杯に顔を背け、なんとか液体を飲むまいと抵抗する。 しかしそんな押し問答が続くはずもなく、無惨の手に顎を固定され無理やりに口を開かされた。 無惨から炭治郎の腔内が良く見える格好となる。 それでもなお、抵抗を試みようと顔を動かそうとするが悲しいことにピクリとも動かせない。 無惨は何が面白いのかそんな炭治郎の様子をすげしげと眺め、そして杯をその口に添え自分の血を流し込んだ。 最初に感じたのは熱さだった。 自分の身体から火が出るのではないかと思うほどの猛烈な熱さ。 身の内からじりじりと灼熱の熱波で焼かれているようだ。 次に感じたのは痛み。 生まれてから感じたことのないほどの激烈な痛み。 体中の血管がぶちぶちと音を立てて千切れていく音が聞こえるようだ。 「があっ!! うぐ、あ゛、うああああああああああ゛!!!」 悲鳴とも絶叫ともいえない声が部屋中に響く。 無惨の腕の中で大きくのけぞりながら炭治郎は白目を剥く。 口からは泡を拭き、身体ががくがくと痙攣する。 「うぎっ! がっ、いやだぁっ、あ、あ゛!! うがああぁあ!!」 炭治郎の咆哮が轟く。 息も絶え絶えの様子だが、体中の変化に叫ばずにはいられなかった。 鬼になんてなりなくないと心で拒絶するが、無惨の血はそんな炭治郎の意思に関わらず彼の身体を急速に変えていった。 人としてのあらゆるものが飲み込まれ、そして抜け落ちたところに鬼としての新しい自分が作られていく。 家族との大切な思い出さえも薄らいでいく感覚に、炭治郎の目からは涙がこぼれた。 そんな炭治郎を苦しみをよそに、無惨は自分の腕の中で少しずつ人間を辞める少年のその様子にひどく満足しその頭を撫でた。 「美しい鬼になれ炭治郎。 太陽のような、美しい鬼に」 「あう……、あ……ぐぅ……」 少しずつ落ち着きを取り戻してきた炭治郎。 焦点の合わないその瞳孔は縦に長く伸び、爪先は鋭く犬歯は長く伸びていた。 その日、炭治郎は人として生きることを辞めた。 人間から鬼へと変貌した少年に最後に起きた変化は、主に対する忠義と慕情だった。 ふっと目の前の人物に目をやると、その方こそが自分の絶対の人だということが不思議と理解できた。 本当ならすぐに傅きたいが、身体がだるく動かせない。 重い腕を持ち上げ、その手で主の頬に触れる。 無惨は微笑むと、頬に触れる炭治郎の手を優しく握った。 炭治郎もにっこりと笑顔を返す。 「無惨様……」 「嗚呼、炭治郎。 これでお前は私のものだ 私の太陽。 ずっと私のそばにいるがいい」 「はい、無惨様。 俺はずっとあなたのものです……」 この日生まれた若い鬼は無惨だけの太陽となって、彼のそばを片時も離れようとしなかった。 【あとがき】 はじめての鬼舞炭。 鬼化は好きなジャンルなので書いてて楽しかったです。 もう一つ無惨様が炭治郎の血を吸ったのはお互いの血液を交換って意味があります。 これを指して彼は鬼の祝言と言っているのですが、すいませんうまく表現できませんでしたね。

次の

『鬼滅の刃』炭治郎ら4人をイメージカラーで表現した天然石ブレスレットが登場。12月21日より発売!

鬼 滅 の 刃 炭 治郎 壁紙

鬼滅の刃第201話「鬼の王」-吾峠呼世晴 鬼化した炭治郎は人間に戻れるのか。 2020年4月13日発売された鬼滅の刃第202話「帰ろう」にて、 栗花落カナヲが大きな仕事を果たします。 その仕事とは 「珠世さんが作った薬を使って炭治郎の鬼化を治す」というもの。 しのぶは無惨との戦いが始まる前、念のため 「鬼を人間に戻す薬」をカナヲに渡していました。 この薬を炭治郎にブスリと注入するわけですね。 これでおそらく炭治郎は人間に戻れるでしょう! いや~良かった良かった! ハッピーエンド! とは、、、 ならないんですわな。 なぜなら、カナヲは「目」を犠牲にしなければ、炭治郎に薬を注入できないからです。 おい、、、待て、、、 なんでやねん。 つまり、カナヲ失明確定…。 両目 炭治郎を人間に戻すために取った仕方ない決断とは言え、辛すぎる。 これまた泣ける展開ですわな。 私としてはカナヲかなり好きだったんでショックでかいっす。 しかもカナヲ死亡フラグ立ってます。 義勇 ぎゆう は右腕切断。 実弥は意識不明 しかし、炭治郎が鬼化したことで物語が新たな局面を迎えようとしています。 炭治郎鬼化後の展開予想 今後の展開としては、私の予想だと、炭治郎は人間に戻れるが 「無惨も蘇ってしまう」というのがまず1つ。 そして2つ目は 「炭治郎が人間に無事戻りエンディングを迎える」というもの。 このどちらかだと思っています。 前者に関しては、 ドラゴンボールでいうところのセルみたいな感じですかね。 セルは、悟空の瞬間移動で「界王星」に連れていかれ死亡したように見えましたが、そこから復活したじゃないですか。 丁度そんな感じです。 このパターンと同じように、無惨も復活するんじゃないかと。 炭治郎が人間と鬼に分裂して無惨が復活しちゃうみたいな…。 そうなってくると、残された伏線回収へ繋がっていきますしね。 残された伏線とは、 「青い彼岸花」「ヒノカミ神楽13の型」などのこと。 この辺がわからないままエンディングとは考えにくいですよね。 特に今ネット上で話題になっているのは、ヒノカミ神楽13の型の名前が『鬼滅の刃』説です。 真相は定かではありませんが、まだこの辺が見れていないので、鬼滅の刃はまだまだ続くこが予測できます。 また、鬼滅の刃は現在人気絶頂の漫画ですから、 このままあっさり終わる事をジャンプ側が許さないと思います。 追記:鬼滅の刃は第205話で完結しました。 2つ目に予想した 「炭治郎が人間に無事戻りエンディングを迎える」で当たっていましたね。 関連記事: 炭治郎の鬼化に対するファンの声 ……無惨には使わずに終わった日の呼吸十三の型。 それではまとめです。 炭治郎は鬼舞辻無惨の血液を注ぎ込まれてしまい、一時的に鬼化しましたが、 その後意識を取り戻し人間に戻れています。 栗花落カナヲは炭治郎に鬼を戻す薬を注入する際、「彼岸朱眼」を使った為、一時的に両目を失明しそうになりましたが、何とか事なきを得ています。 なお、 炭治郎が鬼化する場面は鬼滅の刃第201話「鬼の王」で読めます。 2020年5月時点だと、コミック漫画で読む事はできません。 炭治郎が鬼化する回はコミック漫画の 第23巻 最終巻 に掲載されます。 人気記事: 人気記事:.

次の

【鬼滅の刃】炭治郎ら同期キャラ5人の能力・五感とは?強さの秘密を解説

鬼 滅 の 刃 炭 治郎 壁紙

漫画『鬼滅の刃』で、主人公・竈門炭治郎の同期として登場するミステリアスな少女、栗花落カナヲ。 恵まれた眼と才覚を持つが、その生まれは非常に貧しく、飢えと虐待のため目の前で兄弟が死んでいく過酷な幼少期を過ごした。 上の姉は胡蝶カナエ。 その死を看取った実の妹、胡蝶しのぶは蟲柱に就任。 薬学を研究し、カナエの仇を打つため剣術のみならず毒殺の腕を磨いたが、カナヲの目の前で童磨に取り込まれ、殺された。 なお、これは童磨の体に毒を巡らせるというしのぶの計画の一部。 駆けつけたカナヲは嘴平伊之助の協力も得て、見事童磨にトドメを刺した。 それは、残す者に想いを託したかどうかだ。 『鬼滅の刃』6巻 カナエは死の間際、しのぶに童磨討伐を託さなかった。 そして鬼殺という過酷な世界から離れ、一般人として安寧に身を置くよう願った。 対してしのぶは、カナヲを不可欠な戦力に組み込んだ上で、童磨討伐の作戦を練っていた。 これはカナヲがしのぶと違って、剣術の才覚に恵まれていたからだろうか。 いや、自分は命を賭しながら、一方でカナヲの視力を心配するしのぶのことだ。 きっとどれほどカナヲが強かろうが、彼女はカナヲの身を案じていたと思う。 では、カナヲにとっても童磨は仇であるから、同志として迎えたのだろうか。 これも少し違うと思う。 もしそうなら、童磨を倒す可能性を少しでも上げるため、1年かけた藤の花の毒の摂取をカナヲにもさせただろう。 何より、もっと期間に余裕を持って作戦を共有し、対童磨を意識した訓練を積むはずだ。 なぜ、しのぶはあのタイミングで、カナヲに作戦を告げたのか。 それは、カナヲが技術面だけでなく、精神面の成長を遂げたからではないだろうか。 冒頭に書いた通り、カナヲの幼少期は悲惨なものだった。 幼い心の無意識での自衛だったのか「ある日ぷつんと音がして 何もつらくなくなった」という経験を経て、全てがどうでもよくなり、それゆえ自分の頭で決められない人間となったという。 その状態で、姉達に出会い、鬼殺隊に入った。 なお単行本19巻に収録されている「大正コソコソ話」によると、鬼殺隊に入ったことは本人の意志だったが、それを周りに伝わるように示してはいなかったようだ。 自分で物事を決められないカナヲのために、生前のカナエは、1枚の銅貨を渡した。 どうすれば良いかわからないとき、銅貨を投げ、表裏どちらが出たかで決めればよい、という配慮だ。 これは、当時のカナヲには良かったのかもしれない。 だが、「銅貨を投げて決めればいい」という心の補助輪は、カナヲの精神の成長を止めていた。 そこへ現れたのが竈門炭治郎だ。 彼はカナヲの銅貨を投げ、「表が出たらカナヲは心のままに生きる」と宣言。 そして本当に表を出し、彼女に自分の心の声をよく聞くよう促した。 あくまでカナヲが大切にしていたルールの中で、優しく補助輪を外したからこそ、彼女は自分のペースで漕ぎ出すことができたのだろう。 彼女はこの出来事以来、銅貨を投げなくなり、それはカナヲが一人の人間として生まれ直すきっかけでもあった。 さて、そのようなきっかけを経て、カナヲはストーリーの随所で感情や意志を表すようになっていく。 特に大切な人に対してはそれが顕著になるのだろう。 しのぶとの会話の中で「もっと師範と稽古したいです」と自分の要望を伝えたり、その後、童磨戦に向けた決死の計画を聞くと(嫌だ 嫌だ……)と困惑したりする。 昔のカナヲのままだったら、自分から稽古したいなどと言わず、計画には何の感想も抱かず従っただろう。 カナヲが自分の意志や感情を持ち、それを周りにも出すようになっていることは、長い時間をともに過ごしたしのぶが最も強く感じていたはずだ。 だからこその「やはり良い頃合いだわ 私の姉カナエを殺した その鬼の殺し方について 話しておきましょう」というセリフだったのではないだろうか。

次の