いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めき給ふありけり。。 「いづれ・いずれ」の意味とは?使い分け・例文8つを紹介!

『平家物語』と『源氏物語』違い

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めき給ふありけり。

こんにちは。 古典好きマンです。 「源氏物語と平家物語ってなんだっけ?」「源氏物語と平家物語って対決するんですか?」という質問を受けすぎるので、答えを用意しておくために書きます。 元々この内容は書いて保管しておいたのですが、公開していませんでした。 しかし姓と名字に関する を見て「意外とみんな知らないんじゃな… もっと日本の伝統知ってほしいな…」という感想に至り、ちょっと関連するこちらの内容を公開します。 実は公開にあたりリサーチを進めるにつれて、類似する記事が様々なところに見つかりました。 しかし、私なりにこれを期に情報をまとめましたということで新規性としたいです。 そして、私はそんなにストイックな歴史の専門家ではないため、あまりツッコミを入れないでください。 源氏物語と平家物語って対戦するの? しません。 源氏物語と平家物語ってどう違うの? 全然違います。 源氏物語は、平安時代の全盛期、当時の王家のイケメン「光源氏」の性生活を描いたフィクションです。 作者は有名な紫式部で、背景も当時の平安宮中そのままを描いた優雅なものとなっています。 しかし、あまりにもヤリチンな内容のため、源氏物語は戦前には されるレベルです。 [二千円札に用いられる『源氏物語絵巻』。 より] 一方の平家物語は、平安末期〜鎌倉時代形成に実際にあった戦闘を描いた軍記物の悲劇で、サーガに近いです。 勿論ですがこちらの方が後に書かれています。 戦いと忠義を熱く描いたため、戦前に広く好まれた作品です。 忠誠心といえば平家物語です。 戦国時代の傭兵たちは今のイメージに反して忠誠心が低めと「一夢庵風流記」にも記載しています。 忠誠心が高い武士のイメージは平家物語の時代なのです。 (筆者は日本戦国時代アンチなのであんまり話題を振らないでください。 ] 私のような硬派なマスラオ男子が好きな作品が平家物語、と憶えてください。 好きなシーンは忠度都落です。 なんで「源氏物語」は貴族の話で「平家物語」は武士の話なの? 貴族ファンタジー:源氏物語が先に書かれてしまい、ここから100-200年後に時代は平安時代(京都貴族)から鎌倉時代(関東武者)へ移りました。 こうして武士の時代に軍記物の平家物語が作られました。 当時は名前のバリエーションも少ないので、登場人物の名前の「源氏」が被ってしまったのが紛らわしい元凶だと思います。 源氏物語と平家物語に出てくる「源氏」はどう違うの? ちょっと違います。 ここが今回のメインです。 この2作品がよく分からなくなるのは、双方に「源氏」が登場することが原因かと考えます。 そのため、「源氏」とは何かを説明します。 「源氏」とは? 源氏(げんじ)とは、氏が源(みなもと)の人のことです。 源の姓は、天皇家の者が臣籍降下した際によく用いる姓です。 …これが答えですが、これを読んでいる方はココがなんのことかさっぱりなのだと思います。 また、「天皇家」は当時「王家」と呼ぶことが一般的ですが、面倒になったのでここでは天皇家で統一します。 では順を追って説明いたします。 天皇家は昔から存在しますが、昔は天皇家の人でも諸事情により「天皇家、辞めます」と言い出す人もいました(例:財政上の理由、跡継ぎ争いを避けるため 等)。 これが「臣籍降下」です。 そこで、今も昔も天皇家の方は姓がありませんので、臣になった際に姓を決めることになります。 多くの方がここで「源」や「平」といった姓を名乗りました。 [「諸事情により皇族を辞めた人」の例。 本当にすみません、自主規制です。 ] そのため、重要なことは「源」や「平」という姓を受けた方、およびそのファミリーは多数存在するということです。 源氏の場合は、21の別々の天皇からファミリーが発生したことが分かっています。 「源氏物語」の「源氏」とは? 源氏物語は主人公が「光源氏(ひかるげんじ)」だからこのタイトル(のはず)です。 確かに主人公は天皇の子でしたが側室の子であり、その母も若くして亡くなったため、早くに臣籍降下しました。 だから「源氏」です。 「光」の部分は本当に「光る」という意味なので、合わせて「光源氏」です。 名前というよりも通称です。 英語では Shining Prince と訳されることもありますが、ここまでのご説明で納得が行くかと存じます。 なんで名前が称号なの?」「え?! じゃあ光源氏の本名は?」という疑問が発生すると思います。 作中に名前は登場しません。 光源氏を本名で呼ばない理由は、当時の高貴な人物だからと考えるのが自然かと思います。 他の登場人物も 頭中将・左大臣 といった調子ですので、この作品の統一された世界観とも言えます(私の推測です)。 実際に 紫式部・清少納言 も大まかに言えばこういった形式の名前ですので不自然ではありません。 この内容については、 も参考になさってください。 「平家物語」に出てくる「源氏」とは? 平家物語に登場する源氏は実在する(はずの)皆さんです。 その昔、清和天皇という方がいらっしゃって、その子・孫は多く臣籍降下し源氏を名乗りました。 彼らをまとめて「清和源氏」と呼びます。 そこから200年先に下ったところの子孫の一人が「源頼朝」にあたります。 こういった経緯で、源氏物語にも平家物語にも「源氏」が登場することとなります。 その他の源氏 他にも源氏は居ます。 清和源氏では木曽義仲・足利尊氏・武田信玄・徳川家康 …etc です。 「じゃあなんで源家康じゃないの?」という疑問が出るのですが、そこは にございますが、上にも述べた氏と姓の違いがあります。 足利・武田・徳川は名字です。 なんで「平氏」じゃなくて「平家」物語なの? これも良くある質問です。 上述の通り「源氏」は様々な祖を持つ姓です。 「平氏」も同様で様々な皇族の方が臣籍降下した際に選んだ姓なのですが、平家物語に登場する「平家」は平清盛を頂点としたファミリーで構成されています。 この人達だけ、一家の血縁関係にあります。 そのため、例外的に平「家」と呼ばれています。 こちらに関しては も御覧ください。 なんで「へいけ」なの?「たいらけ」じゃないの? 直前のURLにもございますが、家の読み方については藤原家を「藤家(とうけ)」・菅原家を「菅家(かんけ)」のように読む風習がありました。 そのため源氏・平家も音読みが通例になっています。 そもそも何故「藤原家」を「藤家(とうけ)」と読んだかというと、音読みのほうが正式という感覚があるからです。 すみません、ここ出典を探すことが出来ませんでしたので、例を挙げますと「義経記」は「ぎけいき」・「義仲寺」は「ぎちゅうじ」という読みが正式になっています。 [ヘイケボタル Wikipediaより。 ゲンジボタルよりも小さめ。 ] おまけQ. ほかに源氏物語と平家物語で違うことは? 源氏物語と平家物語の差は、書かれた時代と文化的な側面だけではありません。 文体が大きく異なります。 文体というと分かりづらいですが、リズムが異なります。 源氏物語は訓読みメインの語彙を用い、音楽性を排除した散文で整えられています。 ハイコンテクストなので抽象性が高く、授業や問題で解く際に難解であったことを憶えていらっしゃる方もいると思います。 書き出しは「いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。 」です。 で、私の好きな方の平家物語ですが、こちらは和漢混交体です。 書き出しは有名な「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」です。 上の源氏物語よりも、漢字(音読み)が多いことが分かると思います。 平家物語は、元は琵琶法師が弾き語りをすることを前提にしていたため、自然とリズミカルな文体になるよう研磨されて来ました。 その中で役割を果たしたのが和漢混交体です。 源氏物語の頃までは日本人が書く文はこういったひらがな・訓読みメインで固定だったのですが、武士の時代になりカッコいい感じが重宝されるようになると、漢文書き下しさながらの文を日本語で創作するようになりました。 では和漢混交文のどの辺がリズミカルなのでしょうか。 他言語で言うと、英語のラップはアクセントがあるから可能となっています。 シェークスピアの弱強五歩格もアクセントがあるから可能な韻文でした。 ここは自分の古文の先生から聴いた伝聞ですが、日本語にはアクセントがないのでどう強弱がつくかと言うと、漢音と和音を用いているということです。 元来漢詩も、中国語の平仄を用いて強弱を付けていたのに、日本語にした際に無理矢理書き下し文にしたわけです。 しかし書き下し文の漢音・和音が良い感じの緩急をつけて、強弱があるかのような形式が整いました。 そこが発展して『平家物語』となり、『太平記』や『日本外史』となって、今の日本語に活きています。 学校では 短歌・俳句 の音節が解り易い形式が、和のリズムとして教えられていますが、平家物語のような美しい文のことも忘れないで頂けると幸いです。 以上 「古典が好き」と言うと全く共感が得られないため、今までも多く質問を受けました。 最も多い例をここにまとめることが出来たので、今後活用していこうと思います。 逆に、「平家物語」の内容に興味を持って頂くためにオススメなのは 大河ドラマ『平清盛』かと思います。 凄く面白く完成度も高いのですが、今大河ドラマは戦国時代か幕末でないと視聴率が取れず、駄作と評価されてしまうのは残念な限りです。 私の中では最も評価が高い大河ドラマです。

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源氏物語『桐壷・光源氏の誕生(いづれの御時にか〜)』の現代語訳・解説 / 古文 by 走るメロス

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めき給ふありけり。

教科書本文 (pp8~9) いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり。 はじめより我はと思ひあがり給へる御方々、めざましきものに、おとしめそねみ給ふ。 同じほど、それより下﨟の更衣たちは、まして安からず。 朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを負ふ積もりにやありけむ、いとあつしくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、いよいよ飽かずあはれなるものに思ほして、人のそしりをもえ憚らせ給はず、世の例にもなりぬべき御もてなしなり。 上達部、上人などもあいなく目をそばめつつ、いとまばゆき人の御おぼえなり。 唐土にも、かかることの起こりにこそ、世も乱れ悪しかりけれと、やうやう、天の下にもあぢきなう、人のもて悩みぐさになりて、楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに、いとはしたなきこと多かれど、かたじけなき御心ばへのたぐひなきを頼みにて、交じらひ給ふ。 父の大納言は亡くなりて、母北の方なむ古の人の由あるにて、親うち具し、さしあたりて世のおぼえ華やかなる御方々にもいたう劣らず、何ごとの儀式をももてなし給ひけれど、取り立ててはかばかしき後ろ見しなければ、事ある時は、なほ拠り所なく心細げなり。 冒頭は、 「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、 すぐれて時めき給ふありけり。 」 となっている。 これが、全五十四巻、帝三代、七十数年に及び物語の冒頭です。 この冒頭文は、そんなに簡単 に読み飛ばせるものではないんです。 そこで、今日はこの冒頭文にこだわって分析してみようと思います。 H:ところでA君、『竹取物語』の冒頭ってどうなっていたっけ? A:「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。 」 H:そうだね。 ちなみに、『竹取物語』の主人公って、誰だっけ? A:かぐや姫ですよね。 H:その通り。 だけど、タイトルを見ると誰が主人公に思える? A:あ~、竹取の翁ですね。 H:そう。 だから『竹取物語』というのは、タイトルだけ見ると、ずいぶん変わった物語のような気がするね。 ところで、Bさん、『源氏物語』の主人公って誰? B:光源氏です。 H:そう。 で、タイトルが『源氏物語』になっているから、当然この「源氏」は光源氏のことだと思うかもしれ ないけど、実はこの源氏は光源氏の源氏ではなくて、普通名詞の源氏です。 Cさん、源氏ってどういう意味だ か知ってる? C:え~、源氏って名前だと思ってました。 H:そう、名前なんだけど、正確にいうと何て名前だと思う? C:・・・・・ H:ヒント。 しずかちゃんといえば? C:あ~、源(みなもと)ですか? H:その通り。 D:鎌倉幕府を開いた源頼朝の清和源氏ですか? H:そう。 では、その清和って何だろう? D:清和天皇。 H:その通り。 つまり、清和源氏というのは、第56代清和天皇の皇子を祖とするということになっている一族 なんだけど、ちなみに、天皇家の姓は何だっけ? 雅子様の名字は何? Eさん。 E:小和田雅子さん。 H:それは結婚前ですね。 結婚後は「雅子様」でしょ? つまり、結婚後は名字がないわけです。 天皇家には名 字がない。 それなのに、源という姓があるのはどうしてかというと、これを「賜姓源氏」といいます。 源とい う姓を与えることで臣下に下す、つまり、皇族の身分から離れるということなんです。 直接は関係ないけど、 源平合戦の平家、つまり平氏は何平氏だっけ? F君。 F:桓武平氏。 H:そう。 つまり、桓武天皇の皇子を祖とする一族の誰かが、平という姓をもらって臣下となったというわけ。 仁明平氏とかもあるらしい。 H:天皇の地位は、血によってのみ担保されるから、血が絶えないようにというので、たくさんの奥様がいらっ しゃった。 でも逆に、子どもがたくさん生まれると、天皇の地位につける人の数は限られているわけだから、 残りの子どもたちをどうしようかということになる。 当然、朝廷は面倒を見続けることになるわけだが、その 費用もバカにならない。 国家の財政を逼迫させることになる。 そこで、天皇になる可能性が薄くなってきた 段階で、賜姓、つまり姓を与えて皇族の身分から離脱させてしまうわけだ。 H:まあ、今の説明は概要で、多少いい加減な部分もあるかも知れないから、興味のある人は歴史事典などで調 べてみて下さい。 要は、ここでいう源氏とは賜姓源氏、つまり、源という姓をもらって皇族としての身分を離 れた人という意味だということです。 ちなみに、清和源氏の源頼朝は清和天皇から十代目、それに対してこの『源氏物語』の光源氏は、お父さん が天皇そのものだから一世の源氏ということになり、源頼朝とは格が違うことになります。 源氏物語の意味 H:ところで、この源氏というのは、当時の貴族にとってはどんなイメージだったと思う? G君。 G:カッコイイ人とか? H:どうしてそう思うの。 G:『源氏物語』の主人公だから。 H:なるほど、物語の主人公にわるわけだから、かっこよくなきゃまずいよね。 ところが微妙なんですね。 源と いう姓をもらって皇族ではなくなったということは、天皇という地位と関連づけるとどういうことだろう? もう一度G君。 G:天皇のなることができなくなったということですか。 H:その通り。 では、天皇を中心とした平安時代にあって、元皇族でありながら、皇位継承権を失った人は魅力 的だろうか? G:う~ん、あまり魅力的ではない? H:そうです。 もちろん、政治の世界から解放されて優雅に過ごす文化人といったイメージもあり得るとは思う んだけど、『源氏物語』というのは「皇位継承権を失った者の物語」ということになるんですね。 H:ところが、この作品が偉大なのは、第33巻の「藤裏葉」の巻で源氏は「准太上天皇」という地位につきま す。 准がつきますが、太上天皇というのはもとの天皇、つまり「上皇」とか「院」に相当するので、結局皇位 についたというのと同じなんです。 だから、紫式部の書いた『源氏物語』とは、「皇位継承権を失った者が皇 位に就く物語」ということなんですね。 ここがスゴいところです。 しかもどうしてそれが可能になったのかと いうところに、この物語の第一部の一番の眼目があって、そこがまた面白いんですが、このあらすじの話につ いてはまたそのうち。 ついつい面白いので、私ばかり話してしまいました。 冒頭の文 H:さて、冒頭の文ですが、この文には特色があります。 とりあえず、訳してみようかな。 「いづれの御時に か」と始まっているけど、まず「に」と「か」について文法的に説明してくれる? Iさん。 I:「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「か」は係助詞です。 H:正解ですが、「に」はなんで断定だと分かる? I:「御時にか」の下に「ありけむ」が省略されていると考えられるので、この「に」は補助動詞「あり」の上 の「に」ということになり、断定と判断できます。 H:今の中に正解が出ていますが、係助詞「か」の結びは? I:省略されている「ありけむ」の「けむ」が過去推量の助動詞「けむ」の連体形です。 H:そうですね。 「あらむ」の省略と考えてもいいです。 ついでに「か」の意味は? もう一度Iさん。 I:疑問です。 H:では、とりあえず訳してみよう。 Jさん。 J:「どの天皇のご治世だったか」。 H:「時」に「御」がついていて、天皇の治世という意味ですね。 では、「女御・更衣あまた候ひ給ひける中 に」だけど、この部分の敬語を指摘してくれるかな、K君。 K:「候ひ」と「給ひ」。 H:「候ひ」は尊敬・謙譲・丁寧のどれ? K:謙譲。 H:では、動詞、補助動詞? K:補助動詞。 H:誰に対する敬意? K:帝。 H:正解。 では「給ひ」は、尊敬・謙譲・丁寧? K:尊敬。 H:動詞、補助動詞? K:補助動詞。 H:敬意の対象は? K:女御、更衣。 H:その通り。 訳して。 K:「女御、更衣がたくさんお仕えなさっていた中に」。 H:続きの部分を訳して。 Lさん。 L:たいそう高貴な身分というわけではないけれど、格別に帝の寵愛を得ていらっしゃる方がいた。 H:「いと~打ち消し」で「それほど~ない」の意。 「時めく」は「時勢に合って栄える」の意で、ここは奥様 のことだから「帝からの寵愛を受ける」の意。 骨格は合っていますが、実は「が」の訳が違います。 これは 難しいから仕方ないんだけど、この時代の「が」には、接続助詞の用法がないことが分かっているんです。 よってこの「が」は格助詞。 では、どう訳したらいいですか? M君。 M:たいそう高貴な身分というわけではない方が、格別に帝の寵愛を得ていらっしゃるということがあった。 H:今の「が」は何格ですか? M:主格です。 H:そうね、だから「時めき給ふ」の下に「こと」を補ったね。 ちなみに、同格ととるとどうなるかな? もう 一度M君。 M:たいそう高貴な身分というわけではない方で、格別に帝の寵愛を得ていらっしゃる方がいた。 H:そうですね。 どちらでもいいけど、参考書では同格になっている場合が多いかな。 さて、訳ができたけど、 今の訳から分かるように、「いづれの御時にか」という冒頭の部分は疑問になっていますね。 で、実は、この 冒頭の一文は、さらに色々な疑問を読者に誘発するようになっているんだけど、例えばどんな疑問が浮かぶの だろう? 続きの部分を読んでちょっと考えてみて。 では、N君。 N:分かりません。 H:急には難しいかもね。 「女御・更衣あまた候ひ給ひける中に」の部分ではどうだろう? N:・・・・・ H:「あまた候ひ給ひける」…「あまた」… N:ああ、「あまた」が何人くらいとか? H:その通り。 「たくさん」ってあるわけだけど、そうなると何人くらい奥様がいらしたのかなと思いますよ ね。 私の奥様はたった一人ですが、一人だって苦しんでいるわけだし(笑)。 では、「いとやむごとなき際 にはあらぬ」の部分はどうでしょう? Oさん。 O:「やむごとなし」が「高貴な身分」だから、そうでないとすると、どれくらいの身分なのかなという疑問が わくと思います。 H:そうですね。 そして、最後の部分です。 Pさん、どう? P:どうして愛されているんだろうか。 H:そう。 つまり、冒頭文には、読者がさまざまな疑問を思い浮かべるようになっている。 だから、すぐに物語 の世界に入っていけるようになっているわけ。 で、一番大切な疑問がまだ出ていないんだけど、今出して もらった疑問のうち、本文を読むことですぐに解決できる問がある。 それは「いとやむごとなき際にはあら ぬ」なんだけど、さて、どこを読むとわかるかな? Q君 Q:「同じほど、それより下郎の更衣たちは、まして安からず」とあるので、更衣と分かります。 H:正解。 では、女御・更衣のところの注を見て。 「どちらも天皇の夫人。 「女御」は皇后・中宮に次ぎ、「更 衣」は女御に次ぐ。 」とあるね。 女御と更衣では女御が偉いわけだが、この奥様の身分はどうやって決 まるんだと思いますか? R君。 R:実家の父親の地位によるのだと思います。 H:その通り。 だから、ちょっと注に書き加えておいて。 女御は父親が大臣以上、更衣は大納言以下ということ です。 さて、このことを踏まえると、もう一カ所、この「やむごとなき際にはあらぬ」身分が分かる箇所が ある。 どこだろう? S君? S:第二段落の「父の大納言な亡くなりて」だと思います。 H:そう。 そこでも分かりますね。 さて、一番大切な疑問がまだあるといったけど、それは今の「女御、更衣」 の注と関係するんだけど、分かるかな? Tさん。 T:分かりません。 H:難しいよ。 でも、注をよく見て。 そこに本文に述べられていない要素があるでしょ? T:皇后、中宮ですか? H:その通り。 ここで皇后、中宮についてはなぜ触れられていないのだと思う? T:まだいないから? H:その通りです。 ちなみにTさん、皇后と中宮は同じと考えていいんだけど、一人の天皇に皇后または中宮は 何人いるか知ってる? T:一人。 H:そう、一人なんです。 枕草子をやった時に、道長が自分の娘彰子を中宮にしたいがために、無理矢理定子を 皇后にしてしまったという話をしたでしょ。 奥様方である女御、更衣は「あまた」いても、中宮はそのうち の一人しかなれない。 では、その唯一の中宮がまだ決まっていない現在、奥様たちはどんな状態にいると思 う? U君。 U:みんな平等で幸せだとか。 H:U君はイイ人ですね(笑)。 まあそうなんだけど、今後は一人だけが中宮になるわけ。 どんな雰囲気だと思 う? U:みながその地位を狙っている状態とかですか。 H:そうです。 つまり、多くの奥様方が唯一の地位を狙って暗闘しているといった状況だったと想像できるんだ ろうと思います。 女の世界は怖いですからね(笑)。 H:ちなみに「あまた」については、何人くらいだと思いますか? Vさん。 V:十人くらいですか? H:そんな感じですかね。 一応、三十人くらいが想定されています。 純愛の物語 H:さて、中宮がまだ決まっていないわけだけど、常識的には女御と更衣、どちらの地位の奥様が中宮になりそ うかな? W君。 W:女御です。 H:どうして? W:父親の地位が高いわけだから、天皇は政治をする上で、当然その人に協力してもらわなければならないと思 います。 H:そうですね。 当時は摂関政治の時代で、天皇一人で政権が維持できるわけではないから、やはり有力な政 治家とは良好な関係を築く必要がある。 とすると、有力な政治家のお嬢さんを大切にせざるを得ないことに なる。 ところが、この帝が愛している女性の身分は? W:更衣。 H:しかも父親は? W:すでに死んでいる。 H:ね、常識では考えられない女性をこの帝は愛していることになる。 中宮が決まっていないので、この天皇は 若い?それとも年寄り? Xさん。 X:若い。 H:そうだよね。 しかも多くの女御・更衣がいるということは、将来有望なの?それとも期待が持てないの? X:将来有望。 H:そう。 そういう若くて将来有望だと周囲が期待していた帝が、まったくそのような周囲の思惑とは別に、常 識に反する愛に走っているというのがこの物語の冒頭なんです。 だから、当時の読者はこの冒頭を読んで 大変びっくりしたはずなんですね。 H:帝に求められる帝王学をまったく無視して、一人の女性を女性として愛する。 純愛の物語として源氏物語は スタートするのです。 では、今日はここまで。

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あそびあそばせ・第10話: 異常感想注意報

いづれの御時にか、女御、更衣あまた候ひ給ひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて 時めき給ふありけり。

原文(本文) の御時にか、 女御、更衣候ひける中に、いと際にはあらぬが、 給ふありけり。 はじめより我はと給へる御、ものに 給ふ。 同じほど、それよりの更衣たちは、ましてず。 朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし、恨みを積もりにやありけむ、いとなりゆき、 を、 あかずものにて、人の そしりをも えせ給はず、世のにもなりぬべき御もてなしなり。 上達部、上人なども、目をつつ、いと人の御なり。 唐土にも、かかる事の起こりにこそ、世も乱れ、けれと、天の下にも、人のもてなやみぐさになりて、楊貴妃の例もつべくなりゆくに、いとこと多かれど、御心ばへのを頼みにて給ふ。 父の大納言は亡くなりて、母 古の人の由あるにて、 親、世のおぼえ御方々にもいたう劣らず、なにごとの儀式をも給ひけれど、てしなければ、事ある時は、なほ拠り所なく。 (宮廷に仕え始めた)当初から、自分こそは(帝の寵愛を受ける)と自負していらっしゃる方々は、(寵愛を受けていた女性を)気に食わない者としてさげすみ、ねたみなさいます。 (寵愛を受けていた女性と)同じ身分、それよりも下の身分の更衣たちは、なおさら心安らかではありません。 朝夕の宮仕えにつけても、(その女性の行動は)人の心を動揺させ、恨みを身に受けることが積もったからでしょうか、(その女性は)たいへん病気がちになり、なんとなく心細そうに実家に帰っていることが多いのを(見た帝は)、ますます限りなく気の毒なものとお思いになって、周りの人が悪くいうのも気兼ねなさることもおできにならず、世間の語り草にもなるにちがいない(ほどのご寵愛の)なさりようです。 上達部や殿上人たちも、(そのご様子を)感心しないことだと思って目をそむけており、とても見ていられないほどのご寵愛ぶりです。 唐(中国)でも、このようなこと(帝が女性を寵愛しすぎたこと)が原因で、世の中が乱れて具合が悪いことになったのだ、と次第に世間でもまともでないことと、人の悩みの種となっていて、(唐の皇帝であった玄宗の寵愛を受け、国を傾けたと伝わる)楊貴妃の例も引き合いに出してしまいそうになっていくので、(その女性は)大変きまりが悪いことが多いのですが、もったいないほどの(帝の)ご愛情が比べるものがない(ほど強い)のを頼りにして、宮仕えをしなさっています。 (女性の)父である大納言は亡くなっており、母親である(大納言の)奥方は、昔風の人で由緒ある家柄の方であって、両親がそろっていて、今のところ世間の評判が時めいている方々にもたいして見劣りすることなく、どのような儀式でも、ひけをとらずに取り計らいなさったのですが、取り上げてしっかりとした後見人もいないので、何か事があるときには、やはり頼るあてもなく、心細い様子です。

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